花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】『葛の色染まるころ』







    完『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』
    【短編】『妃の休暇―きさきのきゅうか―』
    【短編】『王の休暇―おうのきゅうか―』
    【詩文】『君へと駆ける気持ち』―黎翔編―
    【長編】Ⅰ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』
    【詩文】『月の裏側―つきのうらがわ―』夕鈴編
    【詩文】【噂ーうわさー】
    【長編】Ⅱ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』
    【長編】Ⅲ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』
    【長編】Ⅳ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』

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    【短編】『妃の休暇―きさきのきゅうか―』

    鮮やかな木の葉の色に 目を奪われ
    湯煙に霞む景色に  しばしの贅沢を楽しむ

    深い山あいの錦の 紅葉を眺めながら
    夕鈴は、王都から遠く離れた 山あいの離宮の温泉に来ていた。

    段々の湯畑は、一度に千人は入れるだろうか?
    それぞれに、湯冷ましされ 絶妙に温度差が違う湯船を
    一つ一つ試してみる。

    真ん中あたりのぬるめの湯船を、夕鈴はようやく気に入り、
    深い秋色の色合いに染まった 山並みを見ていた。

    『…う・うーん♪』
    『贅沢だわ♪』

    狼陛下の花嫁のバイトで、
    すっかり温泉を気に入ってしまった、夕鈴。
    こんな時は、素直にこのバイトで良かったとおもう。

    青空の下、爽やかな秋風が頬を撫でる
    眩しい太陽が、燦々と陽の光を降り注ぎ、湯に眩しく反射していた。

    後宮でない非日常空間の開放感に夕鈴はすっかり寛いでいた。
    伸び伸びと手足を伸ばして、贅沢な湯を一人締めしている。

    なんて贅沢な休暇だろうと思った。

    陛下から、急に話を持ちかけられた時は、
    半信半疑だったが こんな休暇なら悪くない。
    素直に、陛下に感謝して透明なとろりとした湯に身を投げ出した。


    『妃の休暇』の条件
    『葛橋(かずらばし)の初渡りの儀』への妃の出席が気になるが、今は何も考えたくない。

    夕鈴は、存分に、離宮の露天風呂の湯を満喫するのだった。




    【短編】『王の休暇―おうのきゅうか―』へ

    【短編】『王の休暇―おうのきゅうか―』

    静まり返った場に
    …パシャ…ン…
    微かな水音がする

    湯煙に霞(かす)む
    高い衝立(ついたて)の向こう側から…

    黎翔は、色づいた遠くの山並みを眺めながら、
    密やかな水音を聞く

    衝立の向こう側は妃の湯

    衝立越しとはいえ、同じ湯に浸かり
    同じ時、同じ空を見上げていることを君は知らない。

    それだけのことで、幸せを感じてしまうだなんて
    我ながら笑ってしまうほど、恋の病は重症なんだ。
    ・・・・黎翔は、そう思う。

    ・・・・・僕は、君に恋をしている。

    片時も手放したくはなくて、
    無理を言って夕鈴を、ここに連れて来た。

    李順には散々反対されて、
    後宮から連れ出すことに手間どったけれど…。

    ここに着いた時の、君の嬉しそうな笑顔に
    連れて来て良かったと心からそう思ったんだ。

    僕の少しばかりの苦労が報われた瞬間。
    鮮やかに輝く花のような 君の笑顔。
    今も、さっきを思い出すと 僕は嬉しくなるよ。

    温かな『ありがとう。』の言葉に
    ささやかな幸せを感じている 僕がいる。
    かすかな水音に君を重ねる

    こうして、君と休暇を過ごせるなんて…
    僕は、夢にも思わなかったよ。

    誰かの笑顔の為に
    心を砕くなんてこと 僕には無いと思ってた。

    ・・・君に恋をしていると気づいた時から
    僕は、君のことばかり考えているよ。




    【詩文】『君へと駆ける気持ち』―黎翔編―へ

    【詩文】『君へと駆ける気持ち』―黎翔編―

    暖かな陽だまりにいるかのような
    心まで暖かくしてくれる君

    いつの間にこんなにも
    君が好きになっていたのだろうか?

    君へと駆け出す気持ちが止まらない

    君の髪が風になびく度に
    騒ぎ出す心

    君に触れる度に
    跳ね上がる鼓動

    君の笑顔を
    僕だけのものにしたい

    君に触れることができる
    唯一の存在であることが、こんなにも嬉しい

    …と、同時に切なくなる

    君へと駆け出す気持ちが止まらない

    君の心まで欲しいと想う
    気持ちが止まらないんだ


    2012年
    10月14日
    08:38



    【長編】Ⅰ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』へ


    対の詩文
    【詩文】『貴方へと向かう想い』―夕鈴編―

    【長編】Ⅰ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』

    白陽国の水源

    はるかに清き水源の大河の始まりの流れがたゆとう場所。
    深い山間の谷間に蔓(かずら)で作られた橋がある

    蔦と木材で作られたその橋は街道の難所の迂回路として、生活の一部として大切な橋だった。
    また、風光明媚なその地方の観光地として、高い人気を誇っていた。

    最近工事中だったその橋は、ようやく先日、完成した。

    とても難しい工事で、太い蔦の木を何本もより合わせより大きな太い丈夫なものにして、架け替える数年に一度の大事業。

    木々が、深い色あいに染まりきる前に・・・・

    一面の銀世界になる前に・・・

    人々の生活の大切な道となる蔓橋ーかずらばしーを架け替える

    その作業は、特殊な作業が多い為、隠密を含む軍が中心となって取り組む国家事業であった。

    もちろん、最高責任者は、国王である珀 黎翔王。

    今日は、完成を祝う、初渡のお祝いの日であった。
    皆が、完成を喜び、労をねぎらい、橋の未来を祈る

    今回の祝賀は、国王・珀 黎翔王の唯一のお妃である後宮の華 夕鈴妃も出席すると聞き関係者は、特に高い関心をよせた。

    何しろ、国王・珀 黎翔王の寵妃に対する深い寵愛は、国内外で有名であり
    めったに、後宮から出ることのない妃が、国内とはいえ王宮外に出ることは、物珍しかったからである。

    皆、国王の寵妃は、どんな妖艶な美女なのだろうかと噂していました。

    早朝、深山に深い霧が立ち込める
    下からの上昇気流に木々がざわめく。
    葛橋が揺れる

    風が収まるのを待って、初渡りは、行われることになった。



    【詩文】『月の裏側―つきのうらがわ―』夕鈴編へ


    【詩文】『月の裏側―つきのうらがわ―』夕鈴編

    いつも見ている 表の月
    誰にも見えない 月の裏側

    誰かが言った
    『人には皆、月と同じように誰にも見せない裏側がある』と…
    私も『誰にも見せられない裏側』をもつ

    皆が、私を理想化して見ています。
    『さすがは、狼陛下のお妃様』と…。

    皆、おのおのの理想という、フィルターにかけて、私を見る。
    現実の私を、誰もが見ようとはしない。

    私の『月の裏側』に

    気付かないでよ。
    騙されていて…
    暴かないでほしいのよ。

    裏側は、
    誰にも…
    貴方にさえも…

    ホントの私を 見せたくないの。
    綺麗な強い私しか見せたくないわ。



    【詩文】【噂ーうわさー】へ

    【詩文】【噂ーうわさー】

    虚像の狼陛下のお妃が一人歩きしている

    街で噂の私でないわたし

    何でも、妖艶美女らしい。

    あの狼陛下を手玉にとる後宮の悪女らしい。

    ・・・・・・・・・・・・・・。

    人の噂って、恐ろしい

    ちっとも、わたしはそんなのじゃないわ。

    がっかりしても、私のせいではないはずよ。

    期待も持たせてごめんなさい。

    だけど、私の責任じゃないでしょ!?

    腹が立つけど、勝手に狼陛下の理想のお妃様を想像した
    自分のせいでしょ!?

    理想と違ったからって、私に責任を押し付けないでよ。

    ほんとに、困るわ。

    内心、苦笑しつつ。

    がっかり顔に、優雅ににっこり笑ってお妃スマイル。

    ああ・・・早く噂なんて消えればいい。




    【長編】Ⅱ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』へ

    【長編】Ⅱ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』

    「陛下…本当に、この橋を渡らないとダメなのですか?」

    『初渡りの儀だからねぇ…』

    「スッゴく、揺れてますよ!!」
    「それに、下の川が…あんなに下に!」

    葛橋の入り口で、夕鈴は、青ざめた顔で、今から渡る橋をみていた。
    ぎゅっと、握られた両手は、蒼白なほど陛下の衣を握りしめる。

    微かに唇を噛み、今にも泣き出しそうな大きな瞳。
    滲み出す大粒の涙。

    微かに未知なる恐怖に震えた身体を、黎翔は優しく肩を抱き寄せる。

    『大丈夫だよ。夕鈴。』
    『私が、付いている』
    『何も心配いらない』

    「…でも…」

    まだ、不安げな愛しい妃の額に口付ける。
    自分の身体に伝わる、夕鈴の震えが、愛おしかった。

    本来なら、後宮に居る妃が参加しなくても良い【葛橋の初渡りの儀】
    無理やり、連れて来る条件とはいえ
    ここまで震える彼女を見るのは初めてのこと。

    黎翔は、心の中で(・・・・ごめんね。)と夕鈴に呟いた。

    本当に【葛橋】が怖いらしい。
    申し訳なくて、小さく夕鈴に囁いた。

    『どうしても怖いなら、渡らずとも良い。』

    やさしく微笑み、夕鈴を宥めたつもりだった。

    弾かれたように、赤い顔で僕を見つめる。
    今にも零れそうな大粒の涙が、印象的なはしばみ色の瞳が
    強い意思で僕を見ていた。

    「すいません。お仕事なのに・・。」
    「やります。やらせてください。もう大丈夫です。」

    『夕鈴・・・』

    「ここで、待つなんてことしたくないです。」
    「おまたせしました。」
    「きちんと、お仕事します。私。」

    「さあ陛下、お仕事です。渡りましょう。」
    「皆さんが、待ってます。行きましょう。」

    早口で、そういうと陛下とともに、一歩づつ【葛橋】を進むのだった。



    ・・・続く。

    【長編】Ⅲ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』

    ・・・続きます。

    陛下と共に、足元の揺れる葛橋を渡る

    王都の石で造られた橋と違ってなんて不安定なのだろう。

    そろそろと踏み出す一歩に、勇気がいる。

    葛橋を後半分を残すまでといった時に、突然強い突風が吹いた。

    「きゃああっ」

    『夕鈴!!!』

    風に翻弄されて、大きくうねる橋に立っていられない。

    欄干の蔦に掴まり、ようやく揺れをしのいだ。

    揺れた時に、風に攫われた夕鈴の薄絹の肩掛けが

    橋の下、崖下の川へと落下していく。

    風に乗り、フワリと踊りながら落ちる様を夕鈴は、見てしまった。

    見ないで、渡ろうとしていたのに、橋下を見てしまった。

    よりによって、橋の真ん中で・・・・

    (・・・・高い・・・・動けない。)

    座り込んだままの夕鈴を心配して、陛下が近づく・・・

    『夕鈴、大丈夫?』

    ぽそりと、夕鈴は呟いた。

    「大丈夫じゃないです。・・・陛下、動かないで下さい。揺れる・・・・。」

    真っ青な顔で、手が白くなるまで欄干を握り締めた夕鈴。

    不謹慎だけど、怖くて頼りたいなら、僕を頼って欲しかったなと思う。

    動かないでと夕鈴に言われたもののあと数歩の距離。

    こんな状態の君を目の前にして、このままになんて出来ない。

    黎翔は、夕鈴の側により、彼女を安心させるべく背中から抱きしめて

    耳元で、囁く。

    『大丈夫だよ。この橋が、揺れても君は落ちたりなんかしない。』

    『私が、付いてる。私を頼って欲しい。』

    蒼白な夕鈴は、陛下の言葉にこくりと頷いた。

    『夕鈴、動ける?』

    「陛下・・・・動けません。式典の途中です。」

    「私を置いて式典を続けてください。」

    『夕鈴、それは出来ないよ。』

    『僕たちが渡らないと、式典は終わらない。』

    『ほら・・・見える?』

    『後ろから来た式典の共の者たち』

    『僕たちに戸惑っているよ。』

    『僕たちが渡らなければ、あの者たちもあのままだ。』

    『僕たちは、渡らなければならない。』

    『王と妃として・・・』

    「・・・・・分かりました。」





    ・・・続く

    【長編】Ⅳ『葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー』

    夕鈴の欄干を掴む指先を、一本づつ外した。
    ようやく外した指先で、自由になった夕鈴。
    そのまま立ち上がらせて、腰を引き寄せる。

    『残りは、私とともに歩こう。』
    『怖ければ、目を瞑っていて夕鈴。』

    「~~っ。」

    腕の中で、こくりと頷いた夕鈴は、そのまま目を瞑り
    今度は、私の衣にしがみ付いた。

    そのまま胸に顔を押し付けるように、外を見ない。

    ようやく、頼りにされた喜びと、この場から早く動かなければという想い。
    私の胸の中で、震える君のぬくもりが愛しい。

    片手で夕鈴を支えながら、なるべく葛橋を揺らさぬように慎重に渡る。

    時折、揺れるたびに夕鈴の緊張が伝わる。
    そのたびに、引き寄せて囁き、宥めた。

    それを繰り返すこと数度、ようやく渡り切ることができた。

    渡りきっても、しがみ付いている夕鈴に囁く。

    『夕鈴、よく頑張ったね。』
    『橋を渡りきったよ。』

    「えっ・・・本当ですか?」

    いまだ、信じられない様子の彼女の額に、優しく口付ける

    『式典は、終わった。』
    『だけど・・・』

    陛下の顔が済まなさそうに曇った。
    少しだけ、小犬陛下が出ていた。
    ・・・なぜか、瞳は、狼で。

    『夕鈴、帰ろう。』
    『帰るには、また橋を渡らなきゃいけないのだけど・・・』

    (・・・!!!!)

    『橋を渡らない方法もあるにはあるけど、迂回路だから、数週間かかるかな。』

    (・・・!!!!・・・・・!!!!)

    『王都への帰還が遅くなるな。』
    『李順に怒られるかな。』

    至近距離で、にやりと陛下は笑う。
    陛下の紅い瞳に、夕鈴の戸惑う顔が映りこむ

    『どうする?夕鈴。』
    『橋を渡る?それとも、迂回する?』

    夕鈴が振り向いた先は、今渡ったばかりの【葛橋】
    柳眉をへの字にして、こくりと咽喉を鳴らした。

    「・・・・橋を渡ります。」

    涙目で、小さく呟いた妃を、優しく抱きしめ宥めながら
    微笑む陛下の瞳は、狼だったという。


    鮮やかな色で崖下を彩る蔦葛美しい渓谷の景観に、
    葛橋は、ゆらりと揺れ動く。

    まるで夕鈴の気持ちのように・・・・。


        ー完・葛の色染まる頃ーかずらのいろそまるころー


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