花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    黒龍  ~黎翔の非常に複雑な思い~1

    遠乗りに夕鈴を誘うと
    『私、馬に乗ったことがないので、怖いです。』
    『お断りしてもいいですか?』
    そう言って夕鈴に、迷い無くきっぱりと断られた。
    怖いと言われては、何もいえない。

    しかし、どうしても夕鈴と遠乗りがしたくて
    見せたいものがあると、夕鈴を馬房へと連れ出した。

    『少し、ここで待っててくれ』
    黎翔が、居なくなると夕鈴は、物めずらしげに周囲を見渡す。
    馬など、まして馬房など今まで縁が無かったからだ。

    『待たせたな、夕鈴』
    さほど待たずに、黎翔が一頭の軍馬を引き連れ、戻ってきた。
    体つきが、他の馬より二周りも大きい足蹴の黒馬であった。
    その馬には、夕鈴はなんとなく見覚えがあった。
    『私の愛馬だ。名は、黒龍。』

    (!!・・・確か、戦勝凱旋で陛下が乗っていた馬だ!)
    精悍な体つきから、強い馬であることを伺わせた。

    『綺麗な馬ですね。』
    『触っても良いですか?』
    風に揺れる漆黒のたてがみに、夕鈴は触りたい欲求に駆られた。
    『!・・・・いいよ。首の辺りを撫ぜるといいよ。』
    ちらっと昔の古傷を思い出したが、夕鈴と遠乗りをしたい為、思い直す。
    (・・・私も居るから、大丈夫だろう)
    不安など、微塵も感じさせない笑顔で、黒龍のたずなを握る手に力が入る。

    読みが当り、黒龍はおとなしく身をまかせている。
    (かわいい・・・。)



    夕鈴が黒龍になれた頃に もう一度、夕鈴を遠乗りに誘った。
    『もう大丈夫だね? このまま黒龍と遠乗りにでかけようか、夕鈴。』
    『・・・でも。』
    『まだ怖い?』
    『慣れました。怖く無かったです。』
    『私が、一緒だから信用して?』
    (・・・・私は、君と遠乗りがしたいんだ。)
    『分かりました。』
    『陛下が、そこまでお誘いになるなら』
    『ありがとう! 夕鈴。』
    遠乗りができると黎翔は、それはそれは嬉しそうに笑った。

    黒龍の背に、夕鈴を横すわりさせ、
    僕と夕鈴は、初夏の森を駆け抜ける。
    背に揺られ、君の髪が僕に絡みつく。
    君にあわせ、さほど速くない速さで黒龍を走らせる。
    それでも、必死でしがみつく君に微笑みが隠せない。
    日差しで透ける君の髪が金色に見えた。

    『大丈夫!?』
    夕鈴を心配し、声をかけた。
    『大丈夫です!!』
    『遠乗りって楽しいですね!!』
    『黒龍に乗せてくれて、ありがとうございます!!』
    鮮やかな君の笑顔をやっと見ることができた。



    続く
    スポンサーサイト

    黒龍  ~黎翔の非常に複雑な思い~2  完

    次の日、黎翔が妃の部屋に行くと求める妃の姿がなかった。

    侍女に問うと、一人黒龍に会いに行ったのだという。
    『・・・・!!!』
    昔の記憶が、鮮やかによみがえる。
    黒龍が懐くまで、散々苦渋を飲まされた嫌な思い出が蘇る・・・
    夕鈴が危ない!!!
    (夕鈴!)
    青ざめて、黎翔は馬房へ走った。

    (・・・やっぱり、かわいいわ。)
    夕鈴が、鼻面を撫ぜながら、人参を黒龍に食べさせる。
    極上のビロードのような手触りが気持ちいい。
    黒龍は、おとなしく彼女に身をまかせていた。

    『・・・・!!!』
    黎翔は、信じられなかった。
    『ゆうりん!!!』
    まだ呼吸が整わない、荒い息遣いで、黎翔が近づく。
    黎翔は、まだ夢をみているようで、信じられなかった。
    黎翔は、夕鈴と黒龍を交互に見つめる。

    『陛下!』
    『大事ないか? 夕鈴』
    『大事ないですよ? どうなさったのですか? 陛下』

    夕鈴が、無事なのは安心したが・・・・・・・なぜだろう。

    黎翔は、実にスッキリしない複雑な気持ちで、黒龍を見つめていた。
    涼しい顔の自分の愛馬から目が離せない。

    黒龍が、低くいななきながら、大きく身震いした。

    『侍女が心配している。戻るぞ』
    (・・・・なんか陛下怒ってる?)

    黎翔は、きびすを反すとそのまま夕鈴と馬房を後にした。

    黎翔の心は、非常に複雑な思いに溢れていた。

    ー完ー



    総作品・目次へ

    黒龍 ~黎翔の非常に複雑な思い~  種のタネ

    黒龍 ~黎翔の非常に複雑な思い~  種のタネ

    裏設定です。

    1. 黎翔はよほど黒龍に懐かれなかったと考えています。
    噛まれ、落馬し、蹴られ、たまには、池に落とされた!?
    散々な苦い思い出があるのに、あっさり夕鈴に懐くのですから。
    ぷくくく・・・黎翔かわいそう。

    2. 夕鈴は、街中の庶民なので、荷馬車・荷車の商業馬は、見ていますが、
    軍馬と接するのは、初めてと考えました。
    もちろん、軍馬用馬房や運動場は、はじめての設定です。

    3. 黎翔が黒龍に使う馬倉は、3つあると思います。
    遠乗り・狩用と式典用と戦場用です。
    どれを使うにしろ、乗る部分は、乗りやすいように滑らかに黒漆に押さえられています。
    普段使いは、たずなも黒皮ですね。
    式典だけは、馬倉の外側に豪華な装飾があるのでしょう。
    式典用たずなは、黎翔の衣装に合わせて豪華と思います。
    今回は、遠乗り・狩用です。
    夕鈴を乗せるのに、血塗られた戦場用を使わないと思います。
    夕鈴命ですから。

    4 .橋シリーズの種のタネ
    橋シリーズでは、衣装の色に悩みました。
    街中の式典にふさわしいのは、何色だろうと。
    黄色(中国皇帝色)・紫(ヨーロッパ皇帝色)・深紅
    普段、見慣れない民衆に王と分かる衣装って難しくて。
    結局、結婚式ネタ使いました。

    黒龍には、式典用豪華な馬倉がつけられてますから、
    黒龍&黎翔&夕鈴の組み合わせは、つくづくド派手ですね。
    ほんとに、絢爛豪華な組み合わせを、さくらぱん、最前列で見たいですっっ。



    総作品・目次へ