花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【長編】黒龍『紅龍1ーこうりゅうー』

    黄金(こがね)に輝く 欅(けやき)の木立を、先を行く黒龍と陛下。
    王領地の森は、燃え立つような 秋の景色に彩られ、輝きに満ちていた。

    欅(けやき)の木漏れ日に透ける 金色の陽射しは
    幾重にも重なり、陛下と黒龍を照らす
    黒龍が歩を進めるたびに、滑らかな筋肉に沿って
    黒い艶は、木漏れ日に輝く

    いくつもの黄金(こがね)の色の木漏れ日の光輪を弾き、
    本当に楽しそうに陛下は、黒龍との遠乗りを楽しんでいる

    寛(くつろ)いだ陛下の笑顔が眩しい。

    自分との二人乗りの姿しか、今まで見たことの無い夕鈴にとっては、
    いつもと違う 陛下の姿に 今まで私が同乗することで
    思うように楽しめなかったのでは?
    と考えていた。
    本当に申し訳なかった・・・と 夕鈴は考えた。

    陛下から、賜った《紅龍》
    赤みがかる栗色のたてがみ。
    優しい胡桃色に、蜂蜜を溶かしたような双眼
    妃としての私の馬。
    陛下が自ら選び、馬に一人で乗ったことの無い私の為に
    特別な調教を施した牝馬(ひんば)。

    妃の愛馬としてだけでなく、牡馬(ぼば)である黒龍の
    伴侶としても選ばれたのだという
    美しく足の速い強い《紅龍ーこうりゅうー》

    さすがに牝馬としての気品と優雅さに満ちて
    気性は穏やかで、優しかった。

    《紅龍ーこうりゅうー》が、私の元に来てから
    乗馬というお妃教育が始まった。

    むろん、一般市民の私には、馬に馴染みなどなく
    貴族と違い、乗馬訓練など もちろん受けたことなど無い。

    私の乗馬訓練の話は、だいぶ陛下と李順さんは揉めたのだという。

    《今までどうり黒龍の背に乗せるからいい》という陛下と
    《乗馬は、妃教育の必須項目である》という李順さんと。

    なんでも、万が一の戦の折、妃の逃げる算段として
    人質として敵に捕まらない為にも必要なのだということらしい。
    《夕鈴殿の身の安全の為だ 》と、説得したらしい。

    今日は、乗馬訓練を一通り終えての《紅龍ーこうりゅうー》と私の
    初めての遠乗り。
    心配した陛下が、黒龍で付き添ってくれた。

    乗馬訓練の仕上がりに不安を感じていた私には、
    初めての遠乗りに付き添ってくれる陛下の
    その気遣いが、とても嬉しかった。

    嬉しくて 今朝、早起きして二人分のお弁当も作った。

    秋の澄んだ森の空気は、爽やかに私たちを包む

    『夕鈴、疲れない?』
    「いいえ、陛下こそお疲れではありませんか?」
    『いや、僕は疲れないよ。』
    「もうすぐ、目的地ですか。」
    『もう少し先だけど、もうすぐ着くよ。』

    木漏れ日の中で、陛下が私に笑った。

    ゆったりとした歩を進める私達は、
    秋晴れの青空の下、王領地を抜け
    谷を通り、夏に訪れた草原を目指していた。

    夏には、満開の真珠花・・・百合の咲き乱れる草原だった。
    今は、季節が過ぎて、秋の訪れ。
    秋の草原は、夏とは違う彩りを見せているはず・・・・
    百合に代わり
    秋の花々が咲き乱れる草原を目指して・・・二人は馬脚を早めた。


    ・・・続く
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    【長編】黒龍『紅龍2ーこうりゅうー』

    訪れた草原は、夏の面影は無く、すっかり秋の彩りに染まっていた。

    可憐な白や薄紫色の野菊と
    金色(こんじき)の女郎花(おみなえし)の花が咲き乱れ、
    薄(すすき)の銀の穂花(ほばな)が、爽やかな秋風にそよぐ。

    装いの色や空の色は、変われども・・・
    やはり、ここは落ち着く場所で あることには変わらない。

    伸びやかな空気は、王宮に無い自由を感じる。
    夕鈴の初めての遠乗りの場所を
    ここに決めて やはり良かったと黎翔は思った。

    隣の夕鈴を盗み見る。
    草原に向かい、自分と同じように明るい笑顔の彼女。

    普段の堅苦しい妃然とした笑顔でなく、
    下町同様の彼女の生来の気質が溢れた
    生き生きとした伸びやかな笑顔。
    その笑顔が黎翔は、大好きだった。

    厚手の毛織(けおり)の敷き布を
    黒龍の鞍から取り外した黎翔は
    草原の真ん中の丘に生える
    菩提樹の大樹の根元に 厚手の毛織の敷き布を敷いた。

    初夏に 小さな金色(こんじき)の鈴のような
    芳(かんば)しい花をつけていた菩提樹は
    夏の緑の装いを変えて 、秋色の赤の装いになっていた。

    うららかな秋の一日。
    鳥のさえずる声も、心を和ませる。
    そよそよと頬を撫ぜる秋風さえも、心地良い。

    くるくると廻りながら、菩提樹の種が地上へと落ちる。

    初秋の秋草が咲き乱れる草原。

    二人が休憩する場所として
    見晴らしの良い菩提樹の小高い丘は
    格好の休憩場所だった。

    黎翔は、いつものように黒龍の馬具を外し、黒龍を野に放す。
    草原へと駆け出す黒龍。

    夕鈴も、紅龍の鞍に付けた皮袋から、
    今朝、心を込めて作ったお弁当を取り出すと、
    黎翔に手伝ってもらいながら、紅龍の馬具を外してあげた。

    先に馬具を外した黒龍が、紅龍を待つ。
    乱れ咲く秋草の女郎花(おみなえし)の花を背に
    黒龍が草原の入り口にて
    紅龍を待っていた。

    二頭は身軽になった身を軽やかに躍(おど)らせ、
    秋の草原を自然のままに一直線に駆け抜ける。

    まるで、競争をするがごとく
    自由気ままに秋の野原に遊びゆく。

    しっとりとした金色(きんいろ)の女郎花(おみなえし)の花と
    柔らかな陽に透ける 輝く銀色の薄(すすき)の穂波、
    彩りを添える野菊の純白と薄紫。

    その中を黒龍の漆黒の軌跡と紅龍の明るい栗毛の軌跡が躍る
    仲むつまじい二頭が寄り添い 秋と自由を喜ぶ。

    時々聞こえる 二頭のいななき。
    幸せな二頭の姿に、夕鈴と黎翔は自然とあふれる笑顔がとまらない。 

    その姿を眺めながら、厚手の敷布の上で、うららかな木漏れ日を浴びた。
    輝きに満ちた草原は、どれもが黎翔と夕鈴を癒やしている。

    吸い込まれそうな澄んだ色の青空が地平線へと続いていた。
    このゆったりとした時の流れに、君が【貴方が】側にいること。

    それが二人にとって、ささやかだけど一番大事な幸せだった。
    緩(ゆる)やかに蜂蜜色した幸せな二人の時間が流れていく・・・・。


    ・・・続く


    2012.10.29.さくらぱん 続きを読む

    【長編】黒龍『紅龍3ーこうりゅうー』

    夕鈴の美味しい手作りお弁当を食べ終えた陛下。
    ご機嫌で、菩提樹に寄りかかり、透き通る空を眺めた。

    秋晴れの空は、雲ひとつ無く深い青で澄んでいる。
    うららかな秋の木漏れ日が、菩提樹の梢から降り注ぐ・・・・

    陛下にとっては、とても気持ちの良い一日だけの休暇。
    無理を言って李順にスケジュール調整させた甲斐があった。

    草原を渡る風が、葉ズレのかそけき音楽を奏でる。
    遠く響く、黒龍と紅龍の蹄の音。

    眼前に広がる至福の風景。

    静かに流れる穏やかな景色
    眩しい秋景色に、黎翔は目を細めて、
    草原を駆け抜ける愛馬を眺める。

    仲の良い愛馬たちは、並んで草原を駆け抜けていった。
    黎翔の髪と頬を撫でる風が心地よい。

    隣にいる夕鈴を見ると
    暖かな昼の陽射しに夕鈴は眠気に誘われていた
    金茶の髪が、身体の揺れにあわせて輝いていた。
    はしばみ色した、瞳は、まどろみを帯びてとろんとしている。
    菩提樹の下で、こくりこくりと夕鈴は、眠たそうだった。
    まるで、子供のようだなと、黎翔はくすりと笑った。

    『夕鈴、眠そうだね。』
    『朝が、早かったからかな?』
    『僕の肩を貸してあげる。』

    こてん・・・・

    「・・・・ふぁい。ぁりがとぅ。ござぃます。」

    相当、眠たかったのだろう・・・・
    そのまま夕鈴は、僕の左肩に頭を預けて寝入ってしまった。

    すぅすぅ・・と静かな夕鈴の寝息が聞こえる。
    柔らかな陽射しが、今度は、僕をまどろみへと誘う。
    暖かな君のぬくもりと心地よい重み。
    左肩の君が愛しい。

    黎翔も、左肩の夕鈴の頭にコツンと頭を預けた。
    目を瞑ると、余計に君のぬくもりを感じられる。
    頬をくすぐる君の髪の感触。
    香りよい君の香油が鼻を擽(くすぐ)る
    髪に混じる、お日様の香り。
    より確かに、君の存在を感じられる。

    僕もまどろむ君に身体を預けて、一緒に夢の中へと入ろうか・・・
    夢の中での、君と僕は、いったいどんな関係なのだろう・・・
    現実の僕らより、進展しているといいな・・・
    そんなことを黎翔は、つらつらと考える・・・



    秋の降り注ぐ陽射しの中で、二人は、幸せな世界の一部になる。
    それは、愛馬に起されるまでのほんの数刻の時。

    二人にとっては、つかの間の穏やかな或る貴重な一日だった。
    明日から、また忙しい忙殺された時間を過ごす。


    休日の時計の針は、ゆっくりと進む。
    いつしか寄り添い、まどろむ仲の良い黎翔と夕鈴。
    蜂蜜色した時にすべてがとろんと甘く穏やかだった。

    和やかな楽しいゆめなのだろう・・・
    二人は、いつしか微笑みを浮かべていた。

    至福の時に包まれた二人は、蜂蜜よりも甘い夢に浸るのか?
    その答えは、二人にしかわからない。

    爽やかな秋風が、一陣吹いてくる。

    静かな景色に、菩提樹の葉がくるくると踊りながら地面へと
    風に流され落ちていった。

    誰にも邪魔することの出来ない休息時間

    陛下と夕鈴の二人のまどろみ時間は、誰にも邪魔できないのです。


                     ー完ー