花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    完【書庫】黒龍 守る為に……

    ※こちらは、【長編】黒龍『守る為に……』です。
    さくらぱんが、8月に書いた黎翔と黒龍の軍事訓練の様子。
    甘さ、微糖。


    ※ちょっと、間に番外編で書いたおまけを挟み、順番を入れ替えてみました。




    【長編】黒龍『守る為に……』目次

    【長編】黒龍 守る為に……1 2 3 4 5-1 5 6 7 8 9 10 11 12 13 完



    ……1へ続く


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    【長編】黒龍 守る為に……1 

    夏の太陽は、頭上にギラギラと輝き
    地上に陽炎ゆらめく……むし暑い或る日の午後のこと


    王宮の外れ
    黒龍のいる馬房と放牧場より遠く

    夕鈴は、侍女を伴い
    騎馬研鑚所に向かっていた

    夏の太陽は、容赦なく夕鈴たちを襲う……

    「日当たりが、強いです。」
    「お妃さま、大丈夫ですか?」

    『大丈夫ですよ。皆さんは、大丈夫ですか?』

    「お気遣いありがとうございます。大丈夫です。」
    「もう少しで、目的地に着きます。」
    「そこの道に入れば、目的地が見えます。」
    「そちらにて、お休みいただけます。もうすぐですわ。」

    『もう少しなのですね。分かりました。』

    夕鈴の額に滲む汗を拭いながら、侍女が呟く……

    「申し訳ございません。」
    「お妃様は、ご辞退しましたが……やはり、輿をご用意するべきでした」
    「こんなに暑い日にお妃さまを歩かせるなんて……」

    申し訳なさそうに話す侍女に、

    『いいのです。私が歩きますと言ったのだから……。』
    『すべての責は、私です。』
    『貴方がたに責任はありませんよ。』

    にっこりと夕鈴は、微笑んでみせた。





    ……2へ続く





    2012.08.12.さくらぱん


    【長編】黒龍 守る為に……2

    ようやく教えてもらった騎馬研鑚所に近づく


    侍女が、先導し夕鈴が進む先
    いくつもの折れ曲がる複雑な迷路のような小道

    梢を高くして、入り組ませた、高い生け垣のそのむこうから
    騒がしい音がする。

    近づくにつれ
    喧騒が大きくなる

    大勢の兵士の猛る声
    熱気溢れる気合の声が、あちらこちらから聞こえる


    土煙と霞む空気に
    地を踏み鳴らす、軍馬のひづめの音が鳴り響く

    激しくかき鳴らす
    金属と金属が激しくぶつかる剣戟音

    陽炎で霞む人影に
    遠くからでも白刃が煌めく……

    ここがあたかも戦場のように見えた。

    初めて見る騎馬研鑚所は、すべてが夕鈴を驚かせた。


    ……3へ続く 

    2012.08.13.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……3

    夕鈴は、目を見開いて驚く。




    いつも良く行く黒龍の馬房の側の放牧場の広さとぜんぜん違う
    広大な敷地にまず驚く。

    と同時に、ここにいていいものかと思い悩む
    ここは、のほほんとした妃なんかが来る場所ではなかった。

    戦場においての技術を学び、研鑚する場所は
    ぴりぴりとした高い緊張感に包まれていた。
    男たちの熱気が、独特の雰囲気を作る。

    敷地では、大勢の兵士たちが、それぞれの隊毎で訓練の真っ最中であった。
    いくつかのブロックに分かれて、点在する兵士たち。

    ある場所では、隊長の合図で、
    粛々と前後左右と隊列をさまざまに変えていった。
    一頭たりとも乱れない整然さに、夕鈴は、目を見張る

    ある場所では、あらゆる障害が想定されており、
    ぬかるみのある池、川を想定とした堀、うずたかい砂山
    高さのある生垣、間隔を置いた丸太など……
    さまざまな障害を次々と、難なく障害を乗り越える兵士たちの様子に
    夕鈴は、はらはらとした気持ちが止まらない。


    また遥かかなた……
    陽炎揺らめく最奥は、疾走する灰色の影
    人馬一体となりいくつもの影が蹄の音とともに
    稲妻のごとく駆け抜けていく……


    そして、ひときわ目を引いたのは、
    騎乗戦闘術の練習。

    先ほどからの剣戟音の源だった。
    舞い散る砂塵とぶつかりあう影の中、激しく白刃が舞うように輝く……
    練習用だというのに、あまりに鮮烈なその煌めきに錯覚を起こしそうになる
    ドキドキと動機が早まり止まらない。

    その中に、ひときわ目を惹く人影が…………陛下だった。


    ……4へ続く 

    【長編】黒龍 守る為に……4

    近隣諸国からの戦を
    想定した模擬戦は、
    より実戦に近い練習を行っていた。

    刃先を潰し、
    鉛を仕込んだ重量のある練習用の剣

    蒸し暑い夏の午後に、
    振り回すだけでも、
    体力のいるその剣を、
    馬上で自在に操れるまでには、
    相当な鍛錬の時間を必要とする。

    そんな兵士達の戦うなか、
    かつて『戦場の鬼神』と呼ばれた黎翔は、
    異彩を放ち目立っていた。

    愛馬に跨がり、
    足だけで自由自在に、黒龍を操る。

    左手にタズナを握り、
    黒光りする鋼鉄の籠手で
    相手の剣戟を受け止める。

    右手は、軽々と鉛の得物で、
    易々と何人もの兵士達の剣を弾いていく。

    その姿は、
    かつて『戦場の鬼神』と呼ばれた頃を
    彷彿とさせる活躍ぶりだった。




    ……5-1へ続く



    2012.08.13. さくらぱん

    【短編】【黒龍 守る為に……5-1】『鬼神降臨』※要注意!黎翔・戦闘中!!!

    熱い熱風が、他国との戦を想定した鍛錬場に吹き付ける
    砂塵が舞い、軍馬のひずめの音が地響きのように大地に低く響き渡る
    熱風より熱く戦う兵士たちのその中に、国王 伯 黎翔の姿があった。

    汗で貼りつく単衣(ひとえ)の衣は、
    黎翔のしなやかな筋肉の動きが分かるほど、貼りつき……

    力づくで、軌道を変える重さを増した練習用の鉛の剣
    上腕筋と胸筋が盛り上がり、躍動する筋肉

    白刃と共に、
    滴り落ちる汗が煌めき弾けていく。

    相手をする兵士たちに戦慄が走る

    平和の眠りについていた
    まどろみの『戦場の鬼神』が、
    ゆっくりと目覚め始める

    振るう剣裁きが変化する……
    酷薄な愉悦の微笑みに…………
    刻々と変化する黎翔の様子に
    兵士たちは、冷たい汗が噴き出るのを感じた。

    目覚めた『戦場の鬼神』は、もう 誰も止めることができない。
    誰も止められない




    兵士たちのどよめきが、
    激しい戦闘中の前線から
    漣(さざなみ)のごとく巻き起こる

    白刃が舞い踊る……
    旋風が 砂塵を巻き上げる……
    黒龍の甲高いいななきと
    大地を踏みつける力強い蹄の音
    紅く・・・・人を射殺すような鋭い瞳と
    刹那の美しい壮絶な笑みで、
    次々と白刃を振るう黎翔…………

    戦場の鬼神の降臨に軍隊は、衝撃が走った。




    黎翔の紅き冷たい瞳は
    相対する兵士の心を凍らせる

    震える剣は、迷いの軌道を描く……

    幾度となく、死線を生き抜いた黎翔に
    そんな生ぬるい剣は、効かない……

    軌道を読まれ、簡単に剣を弾かれた
    伝わる振動に、兵士は腕が強く痺れた。
    そのまま、くるくると宙に弧を描きながら……剣は、地面に突き刺さる。

    黎翔の剣の切っ先が、ひやりと首筋に当てられた。
    「参りました。……」
    兵士が惨敗を認めた。

    『まだまだだな……剣筋に迷いがあった。』
    『…………もっと、精進するように。』

    にやりと黎翔は兵士に嗤った。


    ……5へ続く


    2012.08.15.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……5

    初めて見る
    黎翔の黒龍での
    戦いぶりに、
    夕鈴は、ため息しか出ない。

    兵士達に混じり、
    黒龍と闘う姿は、
    洗練された剣舞を
    見ているようで……
    美しかった。

    軌跡を描く黎翔の白刃は、途中で軌道を変え、激しく煌めく

    戦い易いように、
    袖が筒状になった
    上着の裾は、
    黒龍の動きとともに、
    はためき揺れ動く。

    何より、
    黒龍と躍動する
    しなやかな力強い動きに、夕鈴は
    強く惹きつけられた。

    激しく闘っていた
    模擬戦は、
    銅鑼の合図と共に、
    ふいに終る。

    その時、初めて黎翔が夕鈴に気付いた。




    ……6へ続く 



    2012.08.13.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……6



    夕鈴に気付いた黎翔は、
    すぐそばにいた将軍らしき人物に何かことこと、ふたこと話しかけた
    話しかけられた将軍は、夕鈴を見て、陛下に微笑む。

    黎翔は、黒龍の馬首を夕鈴に向けると
    柵を飛び越えて、まっすぐに夕鈴のもとへ
    あっという間に距離を縮めてやってきた。
    黒龍の馬上から、黎翔が声をかける

    『夕鈴、来てたのか!?』
    『いつから、ここに……?』

    「先ほどから……」
    「…………黎翔様を見惚れておりました。」

    『どうしてここに……』

    「お姿を見かけませんでしたので……」

    「宰相さまより、こちらに居られると聞きました。」
    「……お邪魔でしたか?」

    ぬばたまの髪より、汗がぽたぽたと流れ落ちる
    暑そうな様子に夕鈴は、懐から手巾を取り出した。

    「どうぞ、黎翔様これをお使いください。」

    夕鈴は、流れる汗を拭いてほしいと手巾を黎翔に差し出した。

    『ありがとう。夕鈴。ありがたく使わせてもらうよ。』

    黎翔は吹き出る汗を手布で拭うが、流れる汗は、止まることを知らない。
    全身に服が貼りつき色が濃く変わっていた。額から首筋に汗が伝う。
    乾いた空気で、喉が渇いた。

    黒龍も全身に汗をかいており暑そうだった。
    ビロードの首筋は、噴出すように汗をかいていた。

    『……ここは、暑いな。』
    『夕鈴、黒龍も休ませたい。』
    『あちらに行こう!!!』

    『――――――夕鈴。手を。』

    「きゃ!」

    黎翔に差し出した夕鈴の手首を引き、
    身体を引き寄せたかと思うと
    夕鈴の身体は、宙に浮き……
    あっという間に
    黎翔は、黒龍の背に 夕鈴を乗せていた。





    ……7へ続く



    2012.08.13.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……7

    黎翔に引き寄せられ、
    黒龍の背に乗せられた夕鈴は
    すぐに気付いた……


    たくましい黎翔の腕の中にいることが夕鈴は落ち着かない。

    いつもと違い衣に強く焚き染められた香から
    黎翔らしい爽やかな香の香りと男らしい汗の臭いに惹きつけられる

    汗で濡れた黎翔の身体に単衣の衣が貼りつく
    たくましい黎翔の腕の中に夕鈴は包まれていた。
    普段気にすることなどない、黎翔の男らしさを意識する。
    軍馬である大きな黒龍の背は、揺れて不安定で……
    どうしても、危なくて、黎翔にしがみつかなくてはならなくて……

    気恥ずかしくて夕鈴は、黎翔に疑問をしてみた

    「黎翔さま」
    「どうして、こんな暑い日に軍事訓練などなされるのですか?」

    『…………その話は、涼しいところへいってからしようか。』

    柔らかな微笑で、陛下は笑った。

    騎馬研鑚所の馬房へと向かう
    陽炎たちのぼる道をゆっくりと、二人と一頭は進む。

    さほどかからず、涼しい日陰とたっぷりの水のある目的地に着いた。

    黒龍が嬉しそうに高く嘶いた。





    ……8へ続く


    2012.08.13.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……8

    すぐに、馬番たちが急いでやってくる。

    黒龍を木陰の濃い涼しい場所に誘導する。

    飼い葉おけに
    白い石がはいったもの。
    緑のやわらかな牧草をいれたもの。 
    冷たい清水を入れたもの。

    黒龍の目の前に飼い葉おけが並ぶ。
    冷たい清水を飲み、白い石を舐め始めた。

    黎翔は、先に黒龍から降りると、
    夕鈴を抱えて、黒龍の背から下ろした。

    不思議そうに、夕鈴は、黒龍を眺める。

    黎翔と馬番は、つぎつぎに
    鞍や
    黒龍の黒い鎖帷子などを外し、
    黒龍を楽にしてやっていた。
    馬番たちが黒龍の汗を
    固く絞った布で丁寧に拭いていく。

    その間も黒龍は、白い石を舐め続けるのだった。

    「黎翔様…………黒龍が舐めているこの石はなんですか?」

    『ああ……コレ!?』
    『岩塩だよ。暑いからね。失ったミネラルを補給してるんだ。』

    黒龍の舐める白い石の正体が分かり、
    夕鈴は、暑い中、御苦労様の気持ちで黒龍の首を撫ぜるのだった。


    ……9へ続く  

    2012.08.13.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……9

    砂埃と汗にまみれた、
    黎翔は、汗を流してくるといって
    研鑚所の奥へと消えた……

    陛下を待ちながら、外の景色を眺める

    広い練習場でいまだに続く、兵士たちの練習

    きっと……汗だくになりながら
    練習しているのだろうな……

    つらつらと眺めながら……
    夕鈴はそんなことを思う


    窓辺からは、熱風がねっとりと熱い空気で入ってくる
    炎天下での練習は、酷な気がしてきた。
    先ほどの疑問が湧いてくる。
    ……今度は、答えてくれるかしら?

    長椅子に腰掛けた夕鈴のすぐ側の
    脇机の飲み物の氷が、
    音もなく溶けて崩れた。


    そこへ、陛下が衣装を着替えて出てきた。

    『待たせたな……夕鈴。』

    『咽喉が、渇いた……』

    「あっ! 黎翔さまっ、それは……」

    黎翔は、脇机に手を伸ばし、
    夕鈴の飲みかけのレモネードを一気に飲み干した。




    ……10へ続く

    【長編】黒龍 守る為に……10

    真っ赤になった夕鈴の隣に座る

    『飲みかけだったか…………すまない。』

    いたずらな笑みを浮かべつつ、
    片手で濡れた髪を拭きつつ
    優雅に、夕鈴の手を
    黎翔は手に取り、
    指先にお詫びのキスをした。

    唖然として、ぱくぱくと口がふさがらない
    夕鈴の真っ赤な顔が、更に赤くなる。
    指先までもが朱に染まり……涙目の瞳で僕を見つめる……

    『夕鈴……可愛い。』

    「―――――っ!」

    引き寄せて、僕の腕の中に閉じ込めた。

    研鑚所という場所……不謹慎さに
    黎翔の腕から逃れようと身をよじる。
    抵抗を許さないかののように、更に強く抱きしめられた

    その時、良い香りが夕鈴の鼻をくすぐる
    先ほどと違い、石鹸の香りが陛下から香っていた。




    ……11へ続く 

    2012.08.16.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……11

    視線を感じる…………気がする。
    ……早く離してほしい。

    「……陛下、お飲み物をお持ちしました。」
    「夕鈴様のおかわりもお持ちしました。」

    夕鈴付きの侍女が彼女を気遣い、機転をきかせてくれた。

    『……ああ、そこに置いてくれ』

    今度は、あっさりと腕を解かれた。

    バクバクと高鳴る鼓動を
    両手で押さえて、
    少しだけ、黎翔から離れてみる。

    効果は、ないであろうが、
    涙目で黎翔を睨みつけた。

    悔しいことに
    私の動揺など気にせず涼しい顔で、
    …………今度は、ゆっくりとレモネードを飲み始めた。

    『ほら……君の分だ。飲むといい。』

    夕鈴が、受け取り、飲み始めるのを黎翔は待つ。

    夕鈴は、優しい瞳で見つめられ、
    ここが、どこであるのかを忘れそうになる。

    外からの喧騒と兵士たちは、たちのぼる陽炎にゆらめいて見える

    日陰だというのに、額に滲む汗がこの場の暑さを物語っていた。



    ……12へ続く 


    2012.08.16.さくらぱん

    【長編】黒龍 守る為に……12

    …………こくっ
    夕鈴は、一口飲む。

    蜂蜜で甘さをつけたレモンらしい冷たい酸味が咽喉を潤す。
    染み渡る冷たさに、身体も心もほっとする。

    「冷たくて、美味しい♪」

    思わず、にっこりと笑みが零れた。







    落ち着いたところで、先ほど答えをもらえなかった質問を、
    改めて黎翔にしてみる。

    「黎翔さま」
    「どうして、こんな暑い日に軍事訓練などなされるのですか?」

    『夕鈴は、お妃教育をしているから、この国のこと知っているよね?』
    『わが国は、豊かな水源と温暖な気候で広大な穀倉地帯がある。』

    「はい。干ばつ等がない限り、豊かな恵みが天から約束されていますね。」

    『その土地を狙い、たびたび諸外国から侵略されてきた歴史がある。』

    「………………。」

    『戦は、時を選ばない』
    『過去の歴史では、盛夏のときもあったし、厳冬の時もあった。
     真夏のこんな暑い日に練習をするのは、過去の歴史を忘れない為と―――――― 兵士たちの持久力の為。

     こんな日だからこそ、万が一の時の練習になるんだ。』

    『……それにね。』

    陽炎揺らめく練習風景を眺めて、目を細める。

    『兵士たちが、ここまで一生懸命なのは、ただ国を愛しているだけではないんだよ。』






    ……13  完 へ続く 



    2012.08.16.さくらぱん

    完【長編】黒龍 守る為に……13

    『彼等には、強い信念がある』

    黎翔は、夕鈴から、手元のレモネードを受け取ると、脇机に置いた。
    夕鈴を引き寄せて、耳元で囁き、再び優しく抱きしめる。

    優しい抱擁と黎翔の言葉は、夕鈴の胸を打つ。

    『大事な人を守りたいという強い信念』
    『過去の歴史では、負けた国がどんなに悲惨な道を辿ったのか教えてくれる』
    『彼らには、家族が居る』
    『大事な仲間が居る』
    『恋人や子供もいるだろう……。』
    『彼らには、愛する人がいるんだ』
    『守りたい人のために……ここまで頑張っているんだよ。夕鈴。』

    夕鈴を抱きしめる力が強くなる。
    黎翔の真摯で静かな言葉が続く……

    『私は、王として彼らの期待に応えなければならない』
    『この国を、焦土と化して戦場(いくさば)になど、したくはない』

    『私も彼らと同じ気持ちなんだ』
    『……愛する民を守りたい』
    『……大事な国を守りたい』
    『これは、国王としての義務だから……。』

    黎翔は、自分に諭すように、ゆっくりと語りかける。

    黎翔が、夕鈴に啄ばむようなキスをした。

    『私も夕鈴。』
    『愛する君を守るよ。』
    『この国と共に……』

    「――――――――黎翔様。」

    …………ぽろぽろと夕鈴の瞳から涙が零れる。
    透明な雫がいくつもいくつも零れ落ちた。

    熱気溢れる鍛錬所から、熱い熱い風が二人を包む。

    交わす瞳には、お互いの姿しか見えない。
    いつの間にか重なる唇
    二人の約束のキスは、真摯で熱いものだった。


                         -完ー




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    2012.08.14.さくらぱん