花の四阿

    Lala掲載の『狼陛下の花嫁』二次小説のブログです。某SNSで書き溜めた小説の他・イラスト・詩文・写真・徒然日記・一部鍵つきを掲載しています。

    【短編】黒龍・離宮編『黒龍』


    辺境の夏は短い。
    初夏の強い日差しは、森の緑に濃い影を落とす。
    木陰から射る光が水面をキラキラと煌かせる森のはずれの川で
    半裸の黎翔は、将軍とともに水浴びがてら、遠駈で疲れた愛馬をいたわっていた。

    水面煌く清流に手布ごと両手を浸す。
    そのまま手布を濡らした黎翔は、頭から水を浴びはじめた。
    雪解けの水は冷たいが、肌の火照りを鎮めるのにはちょうど良かった。
    遠駈での汗を流した黎翔は、愛馬・黒龍の背にも同様に水を浴びせる。

    まだ馬具を着け始めたばかりの黒龍は、さっぱり主人に懐つかなかった。
    それどころか、黎翔を振り落とそうとさえしたのだ。

    川岸に置いた馬具がよほどイヤだったのだろう。
    遠駈で暴れた黒龍は、今は素直に大人しくしている。
    水に入りながら、のんびりと川岸の草をはんでいる。

    苦虫を噛み潰したかのような黎翔に、将軍は豪快に笑った。
    『今は荒馬ですが、良い馬ですぞ。』
    『戦場では馬が命です。馬を味方につけなされ。』
    そう言って簡単に草を束ねたものを、黎翔の手に押し付けた。
    『そのためには、自分で馬の世話をするのです。』
    『さすれば、主人とみとめ、戦場での力となるでしょう。』

    今は一戦を退いたが、老長けた将軍は、馬の扱いにも優れていた。

    黎翔は、将軍の小言に聞き飽きていた。
    遠駈の度に、自分と黒龍とはうまくいかないのである。
    深いため息を一つ吐く。

    『・・・もう少し丁寧に。』
    将軍のもういくつか分からない何度目かのダメだしの時だった

    黎翔は、愛馬・黒龍の背を必死に洗っているはずなのに・・・だんだん腹が立ってきた。
    苛立ち紛れに、自然と黒龍の背を洗う力が強くなる。

    そんな苛立った黎翔の馬の背を洗う手首を無骨な手がやさしく止めた。
    笑うと目じりのしわが深い、将軍は辛抱強く黎翔に諭す。
    『馬とは、愛情持って接すれば、絆が生まれ、主人に答えてくれるものです。』
    『その絆は、生涯切れない強固のものとなるでしょう。』
    『絆を深めれば、落馬などなされないはずです。』
    『その絆を作るのは、殿下ですぞ。』

    『・・・・。』
    黎翔は、唇をかみ締め聞いていた。
    分かっていても、苛立った気持ちは治まらない。
    黎翔に温かなまなざしをおくり、癖の無い漆黒の黎翔の髪をくしゃりと撫でた。

    そのまま将軍は、水を飲み始めた黒龍の首をやさしく撫ぜると答えるように、黒龍が将軍に寄り添う。
    その姿を黎翔は、とても羨ましかった



    2012年
    06月01日
    06:40



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    完【書庫】黒龍 『激闘編』 

    完【激闘編】  last up  2012.12.31. 

    黎翔と黒龍の初陣の様子です。


      上から順にお読みください。

     2012.06.27 .冴えわたる月

     2012.09.30. 【詩文】黒龍・激闘編『飲み込む望月』決戦前夜

     2012.06.07. 【詩文】黒龍・激闘編『不穏なる月』 

     2012.06.27  【短編】黒龍 『跳躍』

     2012.12.31. 【詩文】黒龍・激闘編『曙の月』※決戦の朝

     2012.09.07. 【詩文】黎翔・黒龍・激闘編『曙ーあけぼのー』

     2012.06.27 【短編】黒龍 『激闘編 Ⅰ』 

     2012.06.28. 【短編】黒龍 『激闘編 Ⅱ』

    冴えわたる月

    ※こちらは、原作には、出てこない黎翔の愛馬『黒龍』のページです。
    捏造しております。自己責任で、お読みください。 2012.08.05.さくらぱん


    離宮の窓から月が見える

    たそがれに冴えた光を宿す三日月が・・・




    月を見て私は思う

    はるかこの先の時に思いを馳せる

    (この月が、望月に変わる頃 私は、兄上に叛旗を翻す)

    (戦に勝利した時、国を支える重責に耐えられるだろうか?・・・)

    冷たい光が濃い影を作る

    月の光は、私の心にも濃い影を作っていた。



    2012.06.27.


    【詩文】黒龍・激闘編『飲み込む望月』決戦前夜 2012.09.30.

    【詩文】黒龍・激闘編『飲み込む望月』決戦前夜

    ※こちらは、原作には、出てこない黎翔の愛馬『黒龍』のページです。
    捏造しております。自己責任で、お読みください。 2012.08.05.さくらぱん


    月明かりのみの
    暗闇の四阿に

    灯りもつけず
    酒杯に映る
    月を眺める

    私の髪を揺らす
    風は冷たく秋風で
    指先で掲げた
    酒杯は漣(さざなみ)をたてる

    墨染の空に
    輝く望月
    激流の流れる雲が
    月を妬んで
    隠そうとする

    酒杯の望月が
    秋風に
    歪んで写る

    卓に置いた
    もう一つの
    酒杯の持ち主は
    ここには居ない。

    なみなみと
    注がれた
    酒杯に
    望月が輝く

    酒杯の中の
    歪んだ望月は
    私の兄上
    現白陽国 国王


    酒に溺れ
    女に溺れ
    側近の傀儡と
    化した歪んだ王

    私は明日
    白陽国の為に
    反旗を翻(ひるがえ)

    さしずめ私は
    この流れる雲なのか?

    嵐が来る
    私の手で巻き起こす
    嵐が…
    大きな嵐がやってくる

    歪んだ望月ごと
    私は酒を勢いよく
    呑み込んだ

    歪んだ夜なら
    切り払えばいい。
    私が朝にするまでのこと。

    …夜明けは近い。
    …決戦の時は迫る。



     2012.09.30. さくらぱん


    【詩文】黒龍・激闘編『不穏なる月』 2012.06.07.

    【詩文】黒龍・激闘編『不穏なる月』

    ※こちらは、原作には、出てこない黎翔の愛馬『黒龍』のページです。
    捏造しております。自己責任で、お読みください。 2012.08.05.さくらぱん


    激流のような墨流れる雲の半月の夜に
    単騎で疾走する黎翔がいた。

    付き従うは、隠密騎馬隊だったが
    浩大 率いる部隊は、
    はるかに引き離して後方を疾走していた

    騎馬戦において強いと噂される
    隠密騎馬隊でさえも
    本気で疾走する黒龍にはかなわない

    流れる墨染めの景色が
    激流のようにめまぐるしく変化する。

    騎馬用レンズを通した景色は、
    恐ろしく暗かった。
    それでも、黒龍のたずなを握る
    黎翔には、迷いが無い。

    神業ともいえる騎馬術で
    黒龍と共に黒い疾風と化した黎翔は
    李順部隊と挟み撃ちにし
    敵を殲滅するべく崖上を疾走する。

    滲む輪郭の不穏なる月だけがそれを見ていた。


    2012.06.07.


    【短編】黒龍 『跳躍』 2012.06.27

    黒龍 跳躍

    ※こちらは、原作には、出てこない黎翔の愛馬『黒龍』のページです。
    捏造しております。自己責任で、お読みください。 2012.08.05.さくらぱん


    疾走して助走をつけた黒龍は、漆黒の底の見えない奈落を飛び越える

    軽々と着地した場所は、断崖絶壁の淵より遠く、危なげなく大地の裂け目を飛び越えた。


    作戦を指示した部隊はまだ、崖の向こう側

    ちらりと見ると、崖の向こうで まだ躊躇している

    跳躍力においても、群をぬく黒龍。

    ふっ と黎翔は、笑うと決戦の場へおも向くため、馬首を変え闇夜へと消えた・・・・。



    2012.06.27.さくらぱん


    【詩文】黒龍・激闘編『曙の月』※決戦の朝 2012.12.31. 続きを読む

    【詩文】黒龍・激闘編『曙の月』※決戦の朝

    見据える先は遥か…

    紅の双眼は
    とおく…遠くを見つめて

    現在・過去・未来を思う

    曙の空は赤く…
    中空に輝き 月は剣(つるぎ)のごとく鋭い

    朝焼けに照らされて
    大地が赤い…

    陽に向かい
    大声で叫び出したい衝動を押さえる。

    私が今から倒す
    敵の屍(しかばね)の血のよう…

    王都はあの月の方角

    『……兄上。』

    兄王を倒し、斜陽の白陽国を救わなくては…

    傀儡の王など、いらぬ

    輝く未来の為、私は勝利しなければ。

    風が、変わる
    向かい風から、追い風に…
    凄まじい勢いの寿ぎの風が私を導く

    …逆巻く神風

    走り出した長き道のり…

    もう、そのための口火は切った…

    運命の渦潮(うずしお)にのまれる。

    私は…逆らえない。
    …逆らうすべを知らない。
    …ただ、命運を任せるのみ。

    私に勝利を…
    白陽国に未来に明日を…

    剣のような月に、願いを込めて
    鞘を抜く

    眼下に、紫煙(しえん)をくゆらせる王都から来た兄王の反乱軍討伐部隊


    我に勝利を…

    たずなを握り締め
    黒龍を崖下へと走らせた

    夜通し走らせた前髪が夜霧を吸って重い

    生か…死か…

    勝利の女神はどちらに微笑むのか…

    願わくば私に…



    曙の空
    明日の未来に

    …月が浮かぶ

    はしばみ色した運命の女神が、微笑んだ気がした。



    2012.12.31.さくらぱん


    【短編】黒龍 『激闘編 1』 2012.06.27

    【詩文】黎翔・黒龍・激闘編『曙―あけぼの―』




    見る間に
    流れゆく
    青灰色の雲

    未だに
    陽が昇らぬ
    空は
    淡く光を放つ

    清冽な空気と
    肌寒さの中
    陽が昇るのを待つ

    少しずつ
    青灰色の雲が
    光を浴びて
    煌めき出す

    決戦の明け鳥の
    鳴き声
    黄泉からの使者は
    誰を迎えに来たのか

    三本足の漆黒の神羽が
    曙の空を鳴きゆく

    陽が昇る
    運命が動く
    決戦の日の曙に

    しばし
    静かな静寂と
    内なる決意に
    昇る朝日を待っていた。


    2012年
    09月07日
    09:16

    黒龍 激闘編 1

    ※こちらは、原作には、出てこない黎翔の愛馬『黒龍』のページです。
    捏造しております。自己責任で、お読みください。 2012.08.05.さくらぱん


    いまだ明け鳥の鳴かぬ東雲の空の下
    夜霧とも朝霧ともつかぬ狭間の時

    黎翔の初戦は拮抗し、戦場は麻のごとく乱れていた。

    激しい血煙と興奮状態の怒号が飛び交う最前線に
    黎翔は黒龍の背で白刃をふるう。

    黎翔の重さで敵を屠る両刃の剣は
    時折、鈍い光を煌かせ鎧ごと敵を薙ぎ払う

    極度の戦場における強い緊張感は
    黒龍にも激しい興奮状態を作り出していた。

    敵の馬首と激しくぶつかり競り合う
    黒龍の首の血管は浮き上がり
    ハミを食いしばる口元から泡がほとばしる。

    血走った眼は黎翔と同じ紅眼となり
    敵をひるませ石のようにひるませた。

    その巨大な馬体で睨んだと同時に
    敵を槍ごとへし折り踏み散らしてゆく

    拮抗していた戦況は、いつしか
    黎翔と黒龍の活躍により、黎翔側の優勢に変っていた。

    人馬一体となって、敵を薙ぎ払うその姿は、
    戦場の鬼神さながらの活躍を見せ味方の軍の士気を高めた
    と同時に敵軍を震え上がらせた

    のちに、戦場の鬼神と呼ばれ狼陛下と呼ばれることとなる
    伯黎翔の初陣の姿である。



    2012.06.27

    【短編】黒龍 『激闘編 2』 2012.06.28.

    黒龍 『激闘編 2』

    ※こちらは、原作には、出てこない黎翔の愛馬『黒龍』のページです。
    捏造しております。自己責任で、お読みください。 2012.08.05.さくらぱん







    なめし革の握り柄が、汗と敵の返り血とで滑り出す。
    馬上の黎翔の両刃(もろは)の得物(えもの)
    何人を刀錆(かたなさび)にしても、刃こぼれする様子もない。
    成人した折に、師匠である将軍から貰った業物(わざもの)
    黎翔の手に良く馴染んだ。
    重量のある得物(えもの)を軽々と、まるで剣舞(けんぶ)のように振りかざしてゆく 。

    いつしか黎翔の周囲には、敵が一人も居なかった


    そのとき、東西から砂埃(すなぼこり)をあげて、砂塵(さじん)が近付く。
    陽炎(かげろう)だったゆらめきは、
    その姿をはっきりと、とらえることができた。
    黎翔の軍に一瞬、緊張が走る。しかし杞憂(きゆう)だったらしい。

    挟み撃ちの指示をだした味方の軍だった。
    李順率いる精鋭部隊と、浩大率いる騎馬隊である。

    李順軍から単騎で駆け出す李順。
    李順の怒声が黎翔の耳に届く 。

    「部隊揃ってからの一斉攻撃ではなかったのですか?」

    黎翔に怒りながら宥めることができるのは、李順ぐらいだった。
    いたずらが、見つかったような笑顔で、黎翔は答えた。

    「そう怒るな」

    「先に楽しませてもらっただけだ。」

    そう話す黎翔の瞳は、冷たく酷薄に輝き、愉悦にあふれていた。



                 ー黒龍『激闘編』完ー


    2012.06.28.


    【もくじ】黒龍シリーズ